1月 31

『新しい「価格」の教科書』 出版記念イベント|イベントレポート

弊社CEO 松村が初の書籍「新しい『価格』の教科書」を上梓したことを記念して、出版記念イベントをオンラインにて開催しました。
書籍のサマリー解説や、株式会社Coral Capital 西村賢氏をお相手に迎え、書籍深掘りのスペシャル対談などを行いました!その様子をお届けします。

 

 

<西村 賢氏 プロフィール>

大学在学中からPC・ネット情報誌「月刊アスキー」で連載を持ち、卒業後はアスキーの編集・記者としてネット・デジタルを幅広く取材。2006年にITmediaへ移籍し、ITエキスパート向けWebサイトの「@IT」で副編集長としてエンタープライズITやソフトウェア技術の動向を取材。2007年から2009年にかけてDropboxやAirbnbなどY Combinatorの創業者らを数多くインタビュー。2013年にTechCrunch Japan編集長に就任して日本のスタートアップ、起業家らを取材。約5年間で年次イベント「TechCrunch Tokyo」の来場者数を3倍にするなど日本のスタートアップエコシステムの成長にメディアとして貢献する。2018年にGoogleに移籍してスタートアップ支援や投資関連業務に従事後、2019年8月にCoral Capitalにジョイン。早稲田大学理工学部物理学科卒。上智大学非常勤講師。Rubyエンジニアでもある。

 

<松村 大貴 プロフィール>

1989年生まれ。ヤフー株式会社で米国企業との事業開発やブランディング、復興支援に携わった後、 2015年にハルモニア株式会社を創業。インターネット広告の仕組みから着想を得てダイナミックプ ライシングサービスを立ち上げ、企業へのコンサルティング、ビジョンメイキングを行っている。ビ ジネスのすべてをダイナミックにし、地球のサステナビリティを向上させることがミッション。

 

 

本のご紹介をしていきます!

まず、知っておいてほしい基本。「プライシング」とは一体何なのでしょう?

 

■プライシングとは?

 

プライシングとは、買い手が買ってもいいと思う価格と、売り手が売ってもいい価格の重なる部分を売る側が見定めて値段を決めることです。これを研究し、紹介しているのが今回の書籍になります。

プライシングは、商品が一緒でも変化する市場の状況や個人によっても変わってくるものです。買い手側の心情はなかなか聞くことができないので、どこまで本音を掴めるかがポイントとなってきますし、売る側は買い手の気持ちがわかるほど、適切なプライシングができるということにもなります。

時間軸的な変化に応えていくことを「ダイナミック・プライシング」といい、個人の価値観の違いによって変えていくことを「パーソナライズドオファー」とこの本では呼んでいます。業界によってはこれらを組み合わせていく場合もありますが、基本的にはこの2軸を基準に考えていきます。

 

■価格3.0の時代

この本で紹介している概念として「価格の3つの時代」があります。

プライシングの歴史は、個別交渉の時代から始まりました。そして、大量に作って大量に売る一律価格の時代。交渉せずに商品を購入できるようになったのはたった150年前からで、私たちにとっては当たり前ですが歴史を見ると最近の話になります。

そして変動価格で実現していきたいのが、大量販売の効率を落とさずに個人の状況に合わせたプライシングをする仕組みを作っていこうというものです。経営戦略と価格戦略がどう変動しているかという遍歴も書籍でまとめています。変動する戦略によってそれぞれの変化に合わせた最適解を作っていこうというのが直近のトレンドになっています。

 

■プライステックの3つの変化

プライステックには3つの「変化」のトレンドがあります。

経済の変化について、特に最近は新型コロナウイルスなどのパンデミックにより瞬間的なビジネス対応をしていかなければならなくなりました。パンデミック時代のニューノーマルになっていくと思います。技術の変化については、例えばEコマースが増えたことやキャッシュレスが進み、購買データも貯まるようになったことは大きい変化ですね。

マインドの変化は、昨今のサステナビリティへの興味関心の高まりや自分らしさの肯定というのは、人と違った行動をすることがこの先お得になっていくということです。みんなが好きなものは高くなっていくため、人と違う時間に出勤する、人と違う場所に出勤するなど人と違う行動をすることは自分を肯定しやすくなるということです。

また、これまではなんとなく価格が決まっていることが多かったのですが、これからの時代は組織内に価格戦略の専門チームを作っていくべきだと思っています。しかし、企業にプライシングの専門性を持っている人は現状なかなかいないという問題があります。プライシングに専門性のある人材が今後増えてほしいという想いも込めて今回の本を書きました。

 

最後に、プライシングが今後どういう形で活かされていくのかという視点についてです。
プライシングはサステナビリティの向上にとても有用と言えます。これは、この本で一番伝えたい部分。

カーボンオフセットのように、企業が排出して良い炭素の量に対して税がつく仕組みができていたり、食品ロス削減への影響も出てきています。また、混雑を避ける目的で需要の平準化を図るためにプライシングを活用するなどの動きも徐々に増えています。

ハルモニアは、まさにこの「プライシング」によって社会だけでなく地球環境にも良い影響を与える取り組みをしていきたいと考えています。

 

 

ー ここからはゲストの西村さんをお招きして、書籍の深掘りをしていこうと思います!

松村:Coral Capital西村さん、よろしくお願いします。

西村:よろしくお願いします。プライシングに興味を持っているので嬉しいです。早速、一番気になっていた部分なのですが、日本は価格変化に恐れている気がしています。どう思いますか?

松村:そうですね。日本の企業の共通課題は「価格が取れていないこと」です。つまりは、お客さんが離れていきそうで値上げが怖いと感じていると思います。

西村:近年は、例えば容量が減ったりと「こっそり値上げ」が多いですよね。

松村:しかし、社会に出て働いている人は消費者であり、プライシングする側でもあるじゃないですか。だからこそ、その重要性にはみんな気づいているんですよね。値上げは全体のアップサイクルを上げるために必要なことという認識は徐々に広まりつつあるようには感じます。とはいい、海外と比べるとまだまだです。

西村:日本人は人からきちんとお金を取らない傾向にありますよね。

松村:「儲ける」ことに対してやらしいという風潮がまだあります。悪いことではないけれど、日本ではまだ偏見がありますね。一見「安い」とは良いことのように思えますが、その先の発展にはつながらない。その意識を変えていく必要がありますよね。

 

西村:ダイナミック・プライシングはどのくらい踏み込んでも良いのでしょうか?経済学的には合理的ですが、人によっては受け入れられない部分もあるのかなと思いました。

松村:短期最適をとるのか、長期最適をとるのかという違いだと思います。どれくらいのブランド・愛着にしたいのか。戦略や方針によって、「最適」は変わってくると思います。

 

西村:世の中はダイナミックプライシングを許容するようになってくると思いますか

松村:会場の皆さんにも、率直にダイナミックプライシングについてどう思うか聞いてみたいですね。多分、世の中の一部の方には永遠にわかってもらえないかもしれません。

西村:それはあるかもしれませんね。自分が生産側にいるとポジティブに捉えられるかもしれません。例えば映画館の座席の値段が変わるなどの様々な具体例が考えられると思いますが、そういった時代がくるのでしょうか?

松村:例えば、映画や劇場は相性がいい業界の一つだと思います。
・映画の人気度合いによって料金が変わる
・追加料金によって、コロナ禍だからこそ隣の席分まで開けることができる
など方法は多様にあります。色々な問題は出てきますが、料金体系を変えていくことはとても面白いですよね。

西村:天気予報との連動も面白そうですよね。

松村:実際にスーパーマーケットではアナログでこれを取り入れていたりします。アナログでできてるので、今後はシステムとして取り入れていけるといいですね。

西村:「今日は雨だから座席を売ろう!」という人も出てくるかもしれませんよね。

松村:また、アメリカのスポーツ業界ではオフィシャルで年パスでいけない日の座席を再販売することができるシステムもあります。二次流通を通した価格の最適化ですね。

 

西村:購入者視点の質問をしてもいいですか?購入者の意思決定はものすごいリソースを食う。その中で流行したのがサブスクだと思うのですが、サブスクは今後も流行するのでしょうか?

松村:サブスク化は比較的理にかなっていると思います。こだわって買いたい商品とこだわらなくても良い商品ってあるじゃないですか。そこで今注目されているのが「自動購入」です。考えなくていい商品のサブスク化ですね。例えば大きなトレンドは、アレクサが勝手に商品を選んで注文までしてくれるシステムです。これに向けて、企業はどう売っていくのか?という視点が大切になってきます。

 

西村:未来の話をしすぎたので手前の話を聞きたいのですが、ここ1〜2年の御社の事例を教えてください。

松村:ニュースでピックアップしていただいているのは京王バスさんの事例。バス業界の皆さんはこれまでプライシングを専門に取り組んではいない業界ですが、京王バスさんが主体となってダイナミクスプライシングを実践していただきました。これなら、プライシングは他の業界でもできるということになります。リテラシーや文化の壁ではないということがわかりました。

西村:それでは、会場からの質問も見てみましょう。

 

Q,教育サービスでのプライシングについてどう思いますか?

松村:面白くてやるべきだと思っています。介護業界なども同じだと思うのですが、「教師」という職ががもっと儲かって花形になると良いと思います。今の仕組みだとプライシングを導入しづらいですが、面白い領域です。医療分野や教育現場はパブリックさがつよいじゃないですか。どこまで資本主義の論理でプライシングしても良いのか?という部分によって変わるかなと思います。私教育の領域では有効だと思います。

Q,プライシングの成功している事例はありますか?

松村:「ウェイトレス」というサービスがあります。フードロスを減らすためのダイナミクスプライシングをしているサービス。先輩企業のような感覚です。アパレル、フード、カーボンプライスなどはSDGs と 経済合理性の融合している業界だと思います。

 

 

これで本日のコンテンツは以上になります。

最後になりましたが、西村さん、そしてご参加いただいた皆様、ありがとうございました!


今回、松村が上梓した書籍『新しい「価格」の教科書』はこちらです!

こちらの書籍では、プライシングについてイベントの内容をより詳しく知ることができます。

プライシングをこれから考える方からすでに興味をお持ちの方まで、理解を深めていただけることと思います!

ぜひお手にとっていただけると幸いです!