ハルモニア株式会社 代表の松村です。2023年1月14日〜17日、ニューヨークで行われたNRF 2023 Retail’s Big Showに参加してきました。
小売業に関する幅広いトピックについて議論が交わされ、参加された方によって受け取り方は様々かと思います。その中でも、個人的に重要だと感じたトレンドをまとめます。
◆キーワードTop 5
・従業員のためのテクノロジー
大転職時代を迎え、人材獲得と維持が大きな課題（一方でレイオフもありつつ）となっている米国小売企業。顧客と同様に従業員の満足度や働きやすさへ投資している。
各社の経営者からスピーチがありましたが、共通して言及された点として従業員の働きやすさや、（地域の顧客・パート従業員を包摂した）コミュニティへの投資がありました。10年ほど前から大きな方針転換があって強化されてきたホーム・デポのデジタル担当チームは、顧客向けアプリだけでなく、社内向けツール開発にも力を入れてるとのこと。
→ロウズ、ターゲット、ホールフーズ、ホーム・デポ
・リアル店舗を強みとした商品へのアクセシビリティ（試しやすさ、買いやすさ）
すべてECに取られるといった言説は聞かれなくなり、各社ともリアル店舗をコアにした体験設計へ注力しています。個人やカテゴリーに合わせて、選びやすく、買いやすい方法を、複数フォーマットの店舗やアプリで提供し、シームレスに繋ぐ。
E-commerceという言葉は当たり前すぎて使われなくなる可能性も。in-store（店内購入）, Delivery（即配）, Shipping（配送）, BOPIS（事前注文）のどれを強化、連動させていくのか？と、解像度を上げて考えていくことが必要です。最大の脅威であったAmazonも近年はリアル店舗支援ソリューションに力を入れていることからも、やはり店舗の価値は無くてはならないという共通認識ができてきたことが見られます。
→ターゲット、ノードストローム、ホーム・デポ
・顧客ニーズ起点の戦略設計（テクノロジー起点ではなく）
消費者、顧客をどう捉えるかから戦略が始まる。インフレ、消費者の所得、市場トレンドetcが2023〜2024どうなるかを読み、価格戦略、商品構成、店舗テクノロジーはそこに合わせて語っていた。
今年の全体テーマはBREAK THROUGHでしたが、注目を集めるような斬新な技術、AIや自動化等のトレンドの言及は意外と少なく、各社とも骨太で本質的な取り組みに回帰しているように感じました。面白い技術をとりあえず試す時期が一段落し、真に成果のあったものや、最新の顧客ニーズに合致するものを残しているフェーズとも考えられます。
→ロウズ、Saks OFF 5TH、クローガー
・長期業界課題への投資
ペットの健康や、次世代の働き手の教育など。もちろんサステナビリティも。
多くの雇用と生活を支える業界リーダーの責任範囲として、長期的な課題解決に取り組む姿勢も共通して見られました。業界環境やルールが変わるのは前提として、率先して事業モデル、サプライチェーンの変革や、教育への投資に取り組んでいます。例えばペット業界で今後生体販売が禁止されていくことを踏まえ、Petcoは小売から、ペットの健康とウェルネスをサポートする企業へと自己定義を変えていく意欲などが示されていました。
→Petco、NRF Foundation、ロウズ、ターゲット
・インフレ時代の価格競争力
共通認識として消費者は価格センシティブなモード。クーポンや顧客データ分析、あるいは業態設計によって、持続可能な方法でのお得訴求に取り組む。
食品、ガソリン等のインフレが日本以上に進むアメリカでも、やはり消費者は安さを強く重視する状況となっています。Krogerはアプリを通じて顧客個人に最適化したクーポンを積極配信してお得感を訴求。NBからPBへのスイッチが大きく進んでいるとのことです。
→メイシーズ、クローガー、Saks OFF 5TH
◆次点トピック
・商品とプロモーションのパーソナライズ
自由にメッセージを入れられるラッピング、商品の色選択、名前の刻印などがファッション系ブランドを中心に定石になりつつあります。「パーソナライゼーションカウンター」が、デパートやブランド旗艦店で多く見られました。スターバックスの開発チームはロイヤルティプログラム+パーソナライズ提案を強化しています。
→ノードストローム、スターバックス、NIKE、LEGO
・リテール企業がテックサービスを外販する時代
自社で確立した新形態、販売モデルをサービス化して他のリテール企業に販売する時代に。Amazonは日本で展開しているネットスーパー連携とはまた違った形で、小売業向けの即日配送実現サービスを提供しています。
→Walmart GoLocal, Amazon Today
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