8月 11

レジャー施設・テーマパークの価格戦略とダイナミックプライシング

2020年7月、東京ディズニーリゾートの運営が再開されました。感染症の拡大を受けて2月末から臨時閉園を続け、多くのファンが待ちわびた運営再開。チケットが入手困難であることが話題になっています。

新しい販売様式として「時間差入園」が導入されており、3種類のチケットが販売されています。

  • 1デーパスポート(終日) 大人:¥8,200
  • 入園時間指定パスポート(午前11時~) 大人:¥7,300
  • 入園時間指定パスポート(午後2時~) 大人:¥6,300

チケットごとに販売枚数が制限されており、販売枚数と時間指定によってキャパシティコントロールが図られています。これは混雑緩和を目的にダイナミックプライシングの考え方を応用した価格戦略と言えるでしょう。

レジャー施設・テーマパークの収益構造と価格

レジャー業界(遊園地、テーマパーク、水族館など)は、ダイナミックプライシングの導入検討が進んでいる業界のひとつです。すでに米ディズニーランドやユニバーサル・スタジオ・ジャパンが入場チケットの販売に変動価格制を導入しています。レジャー施設やテーマパークは、航空機やホテルほどキャパシティの制約は強くありませんが、ディズニーランドやユニバーサル・スタジオ・ジャパンのような人気テーマパーク・遊園地や、入場数や座席数に制約があるような施設(ex. 水族館)では、入場チケットの料金に関する取り組みが進んでいます。

また、レジャー施設・テーマパークの収益構造もダイナミックプライシング導入に関係していそうです。オリエンタルランドによると、東京ディズニーリゾートのゲスト一人あたり売上高のおよそ6割が飲食・商品販売収入、およそ4割がチケット収入となっています。

出所:オリエンタルランド

チケットの販売数量が多すぎるとレジャー施設内の飲食店や土産店に混雑が発生し、「混んでいるから購買を諦めよう or 最小限に留めよう」というゲストが増え、飲食・商品販売収入が落ち込むことは十分にありえます。もちろん、単純に混雑によってゲスト体験が損なわれる側面もあります。

そのため、レジャー施設やテーマパークはチケット収入と飲食・商品販売収入のバランスを見ながらプライシングを実行していく必要があり、変動するニーズに合わせてチケットの価格を変動させるダイナミックプライシングの検討が進むのは自然なことかもしれません。

コロナ禍による変化

コロナ禍における入場チケットの販売数量は、以下のような理由から以前より来場客が減ることを前提に考える必要があります。

  • 外出自粛や移動制限が解除されたとしても、以前と同程度の来場客を確保できるとは考えにくい
  • コストをかけた集客施策を実施しづらい

また、これまでのゲスト体験の観点に加えて、公衆衛生の観点から混雑しないことを前提とした事業運営がより一層求められるでしょう。混雑はゲスト体験の低下だけでなく、従業員や地元民の健康問題に発展しかねません。こうした問題は、レピュテーションリスクや地元民による反発リスクを多分に含んでおり、中長期的な運営そのものを脅かす一大イシューとなる恐れもあります。

レジャー施設・テーマパークにおけるダイナミックプライシングの可能性

以上を踏まえると、すでに一部で実施されているような入場チケットの料金に差をつける取り組みは今後ますます加速する可能性があります。

現状では、感染防止のために入場チケットの販売数量に制限をかけることでとにかく混雑を回避する取り組みが一般的です。今後は、コロナ禍での公衆衛生上の懸念や飲食・商品販売に影響が生じない程度に混雑を(自然な形で)緩和しながら着実に来場機会を確保していく、より高度な取り組みが進むことが予想されます。

 

TEXT: 村田 剛士 株式会社空 広報・マーケティング
お問い合わせはこちらから

 

[参考]
https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00099/00004/
https://www.travelweekly.com/Travel-News/Hotel-News/Disney-version-dynamic-pricing
https://jp.ub-speeda.com/analysis/archive/32/
https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikaisetsu/hitokoto_kako/20181018hitokoto.html
https://blooloop.com/news/shanghai-disneyland-reopening/