10月 20

京王電鉄バス『運賃設定の効率化と人材育成、収益アップを実現』

■プロジェクト概要

  • 業種       :交通
  • クライアント企業名:京王電鉄バス株式会社
  • 対象サービス   :高速バス座席予約システム「SRS」
  • 内容       :ダイナミックプライシング機能の提供

■導入背景

  • 手作業での運賃変動を行っていたが、運賃設定担当者の負担増加や業務の属人性が課題
  • 新型コロナウイルスの拡大により営業施策が打ちにくい状況下、変動運賃の価格適正化・自動化が急務
  • 社員のレベニューマネジメントへの理解を深め、データ分析など専門性の高い業務を行う人材を育成するため

■導入成果

  • 2021年1〜4月の初期より、一部路線において月次収益が数%向上
  • データ分析などを社内で行える人材の育成

 

京王電鉄バス株式会社は、京王電鉄沿線の住民の足となる乗合バスや首都圏と各地を結ぶ高速バス事業を展開しています。また運行事業者向け高速バス座席予約システム「SRS」と、利用者向け予約サービスの「ハイウェイバスドットコム」を運営し、全国45社・140路線以上の高速バス路線が販売されています。

しかし、昨今の感染症の流行により旅行の自粛も長引いているうえ、長時間になりやすい乗車時間を安全に過ごしていただくための対策が欠かせないなど、高速バス業界全体が困難なチャレンジのときにありました。

そのようななか、京王電鉄バスの「SRS」は、ハルモニア株式会社が提供するダイナミックプライシングシステム「MagicPrice」と2020年12月より連携し、主要路線でのダイナミックプライシング導入を始めました。

導入開始から半年強、苦しい状況ながらも路線によっては月間数%以上の増収という成果も出ているとのことです。京王電鉄バスの皆さまにお話を伺いました。

 

逆境こそチャンス。今こそ煩雑な手作業をシステム化し、人材育成するとき

ーーコロナ禍でのSRSへのダイナミックプライシング導入は、大きな決断だったと思います。なぜそのタイミングだったのでしょうか?

京王電鉄バス 担当者様(以下、京):京王電鉄バスでは、協業の少し前から手作業での運賃変動を行っていました。毎回人の目で各路線の状況を確認し、運賃を変動させる作業には時間と労力がかかります。乗車日の1ヶ月前から予約を開始している路線では、毎日1か月先まで数百便分の販売状況を確認しなければなりません。始めてみたはいいものの、担当者の教育やオペレーションの構築が不十分だったこともあり、販売状況の変化を見逃してしまうことも多く、適切に機会を捉えた運賃変動があまりできていなかったというのが実態でした。

感染症の流行による影響で、新たな営業施策を打ちにくい時期だからこそ、運賃施策が重要であると認識しており、これまで充分な成果があげられていなかった運賃変動業務の適正化・自動化が急務だと考えていました。そこでハルモニアに声をかけ、ダイナミックプライシングシステム導入をスタートさせました。このシステムを導入することで、社員のレベニューマネジメントに対する意識を向上させ、データ分析など、より専門的な知識をもつ人材を育成するきっかけにもできればと考えました。

 

MagicPriceで需要に応じた柔軟な変動価格が実現

ーーきっかけは工数のかかっていた業務の自動化(DX)と人材育成の文脈だったのですね。しかし、自動化するに当たって大変だったことも多かったのでは?

ハルモニア 担当者(以下、ハ):手作業や経験則での取り組みはノウハウが属人化してしまいがちで、引き継ぎも大変です。今回の導入プロジェクトでは、まずは京王電鉄バスさんのノウハウを解きほぐして、体系化されたルールを考えるところから始めました。その過程で京王電鉄バスさんの運賃変更のフローが想像以上に難解だったこともわかりました。(笑)

京:そうですね。(笑)
以前は、繁忙期や土日祝日は運賃を高くする、というような「カレンダー型」で運賃を設定していました。MagicPriceの導入によって、販売の進捗状況が見やすくなり、手軽に運賃を変動させることができるようになりました。より柔軟に需要に応じた「ダイナミックプライシング」を実践できるようになったと思います。

また、このダイナミックプライシングシステムは自社のみでなく、SRSをご利用の運行事業者様にもご利用いただいています。価格戦略やオペレーションは各社ごとに異なりますので、それぞれの戦略に沿った最適なプライシングが実現できるよう、導入から運用まで支援できるようにしたいと考えています。ハルモニアのカスタマーサクセスチームは常に運行事業者に寄り添う姿勢でコンサルティングをしてくれます。システム的にも、MagicPriceのUIはシンプルでバス事業者にも扱いやすいものでしたので、比較的抵抗なく、皆様に受け入れていただいていると思います。

ーーダイナミックプライシング導入に際し、社内だけでなくお客様への説明も大変だったかと思います。その点はどのような工夫をされたのでしょうか?

京:事前に、「ハイウェイバスドットコム」でのお知らせをするだけでなく、自社サイトや窓口でも、お客様に周知をしました。これまでのところ、大きなトラブルはなくスムーズにお客様にご利用いただけています。

 

導入初期フェーズでの収益向上が実現。今後の路線拡大の弾みに

ーーここまでのダイナミックプライシングの取り組みで、収益面などの成果はいかがですか?

京:コロナ禍で全般的に乗車人員が大幅に減少している中でありますが、2021年1〜4月の初期フェーズでも、数%の収益向上効果が出ています。社内のノウハウの体系化や、過去の予約データ分析に基づいてシステム設定の改善を進め、精度を向上させていっています。収益向上については、路線や便によってまだまだ改善の余地は大きいと考えているので、引き続きトライしていきたいと考えています。

ハ:苦しい市況下ではありましたが、初期段階として素晴らしい成果だと思います。プライシング改善に対する京王電鉄バスの皆さんの熱意や努力を私たちも強く感じているところです。

 

高速バスの事業者・利用者ともに嬉しいプライシングを目指す

ーー今後の京王電鉄バスとハルモニアとの協業について、ぜひ意気込みをお聞かせください。

京:ここまでの検証結果を受け運行事業者様から「もう少しああしたい、こうしたい」という使い勝手のご要望もいただいています。今後も機能改善を進め、多くの運行事業者様に便利に使っていただけるサービスにし、各社様の収益力向上、運営効率化に貢献できればと考えています。

ハ:私たちとしても、プライシングによって予約の集中する便への需要を上手く分散させるなど、感染症対策と運行効率、そしてバス利用者の方の利便性のバランスのとれた運用ができるよう、お手伝いしていければと思います。

ーー京王電鉄バスの皆さま、ありがとうございました。