ハルモニア株式会社(旧社名:株式会社空)は、プライシング変革支援の一環として「コロナ禍におけるエンターテインメント施設の価格に対する意識調査」を実施しました。国内のテーマパーク、劇場、水族館などの施設について、新型コロナ流行前後における購買行動の変化や価格に対する意識調査を実施しました。
調査結果から、新型コロナ収束後のエンターテインメント施設のプライシング再考への示唆となり得る消費者の意識・行動の変容が見えてきました。
■サマリー
- エンターテインメント施設への年間支出金額
- コロナ禍※1、年間の支出金額は減少
- コロナ後※2もコロナ禍前※3の水準へは戻らない見込み
- コロナ後、イベント等のオプションへの支払い許容額は増加
- 調査対象施設の価格受容帯
- 上位施設は価格受容帯を上回る価格を設定
- 下位施設は弱気な価格設定
- 値下げが歓迎される理由
- 工事・改装や天候などの理由で通常のコンテンツが体験できない場合が上位
- 妥当な値下げ幅は11〜20%が最多
- 値上げが許容される理由
- 特別なイベントや利便性向上オプションが上位
- 値上げ許容幅は6〜10%が最多
※1 調査実施期間2021年7月16日(金)~7月20日(火)の直近1年間
※2 今後、COVID-19(コロナウイルス)が終息したと仮定した場合の1年間(例:ワクチンの接種等を通じて、一定の外出に対する安心感が醸成された場合)
※3 COVID-19(コロナウイルス)が発生する前である2018年頃の1年間
ポイント1 エンタメ施設への支出額はコロナ後も以前の水準までは回復しないが、利便性向上オプション等への支出予測はコロナ流行以前よりも増加
<調査結果>
- コロナ禍前の3年前と直近1年間で、エンターテインメント施設入場料への支出金額は年間10,001円以上使う人の割合が7.2pt減少
- コロナ後のエンターテインメント施設への支出予測金額を聞いたところ、年間10,001円以上使う人の割合が47.9%であり、これはコロナ禍前の水準(50.5%)より2.6pt低い結果
- 一方で、「イベント、その他オプション」へ年間10,001円以上支払っても良い、と回答した人の割合は、コロナ禍前より1.9pt増加
<解説>
コロナ禍では来場が控えられたエンターテインメント施設だが、コロナ後は、優先入場やファストパスなどのオプション支払い意向は高まり、利便性や施設で快適に過ごすための環境を整備しオプションを設定することで、エンターテインメント施設の収益向上に寄与しうるとの示唆が得られた。
ポイント2 消費者の受容価格帯が上位の施設は実際の価格も強気傾向だが、下位の施設は弱気な価格付けに留まる
<調査結果>
- グラフに示すエンターテインメント施設への支払許容金額についての調査結果と実際の価格を比較したところ、実際の価格が調査結果の理想価格より高い施設があった(テーマパークで最大+4,400円差、舞台・劇場では最大+11,500円差)
- 舞台・劇場のカテゴリでは、実際の価格の一部が価格受容帯より低い施設があった
<解説>
PSM分析結果において、価格受容帯が高い価格帯にあるグラフ上位の施設は、実際にも強気の価格設定をしている傾向にあった。一方で、グラフ下位は実際の価格も低価格にまとまっており、価格戦略上の弱者と強者にわかれた。
また、舞台・劇場では、下位ランクの座席について値上げ検討が可能という示唆が得られた。
ポイント3 変動料金について最も歓迎される値下げ理由は、工事・改装や天候などで既存コンテンツが体験できない場合で、値下げ幅は11%〜20%程度が妥当
<調査結果>
- 「工事・改装で通常コンテンツの一部が利用できないとき」は44.8%で1位、「天候コンディションが特に悪い場合」が42.4%で2位
- 下位の値下げ理由は「直近一年間の来場数・支出金額が多い場合」で、16.4%。1位の理由の半分以下という結果
- グラフに示す設問の各選択肢ごとに、妥当な値下げ幅を聴取したところ、値下げ理由上位の選択肢における妥当な値下げ幅は11%〜20%が最多
<解説>
値下げ理由の上位は、工事・改装や天候不順など、平常時より利用可能なコンテンツに制限があり満足度が低くなるような場合が占め、その値下げ幅は11%〜20%を求める回答が最多。
一方で、「直近1年間の来場数・支出金額が多い場合」のロイヤリティの高い顧客への割引や「複数名での来場」といったボリュームディスカウントの希望は相対的に低い結果となった。
満足度の高いリピーターへの貢献としての割引よりも、満足度が低くなる場合へのサポートとしての割引の方が需要が高い傾向があると言える。
ポイント4 変動料金について最も許容される値上げ条件は、特別なイベントや利便性向上オプションのある場合で、値上げ許容幅は6%〜10%程度
<調査結果>
- 「どのような場合においても値上げは必要ない」が1位
- 最も値上げが許容できると回答したのは「特別なイベントやコンテンツがある場合」で26.8%
- 「優先入場・退場猶予などの利便性向上がある場合」でも24.7%が値上げを許容
- グラフに示す設問ごとの値上げ許容幅を別質問で調査したところ、上位3つの値上げ許容幅は6〜10%という回答が最多
<解説>
特別なイベント開催やグッズプレゼントなど、通常の施設利用よりも付加価値のある場合や、優先入場・退場猶予など利便性が上がって快適に施設を利用できる場合においては、値上げを許容する消費者の割合が高いことがわかった。しかし、その値上げ許容幅は6〜10%の回答が最多となり、前項にある値下げ幅と比べると当然ながら消極的な結果となった。
■まとめ
エンターテインメント施設は、入場チケットに加え施設内での飲食・商品の売上も大きな割合を占めている。平常時であれば、両者の売上を最大化するための収入・来場者数のバランスが求められる。しかし、昨今の新型コロナウィルスの流行により、公衆衛生の観点から混雑を回避するためのキャパシティコントロールが強い制約事項となった。
今回の調査では、コロナ後もエンターテインメント施設への支出はコロナ禍前の水準に戻らないと予測される一方で、施設内での特別な体験や快適に過ごすためのオプションに対しては支出額が上がる可能性が示された。
つまり、今後は入場チケット収入の減少傾向は避けられないものとなり、施設内での体験・サービスのオプション売上を増加させられるプライシング戦略、料金体系への移行を早急に検討する必要があるだろう。また、入場チケットについても、収入減少の抑制に加え、繁忙期のキャパシティコントロールの必要性も鑑みて、時期や混雑度に応じた変動料金制(ダイナミックプライシング)の導入検討も進めるべきである、という示唆が得られた。
■本調査に関するお問い合わせ
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また、ハルモニア株式会社では、プライシング変革支援として、観光・エンターテインメント業界におけるダイナミックプライシング導入相談も承っております。
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■調査概要
サンプル数:スクリーニング調査 32,814サンプル、本調査 1,200サンプル
調査機関 :株式会社ディーアンドエム
調査時期 :2021年7月16日(金)~7月20日(火)
調査手法 :インターネット定量調査
対象者割付:エンターテインメント施設への訪問経験の有無による割り付け
調査対象者:20-69才の男女
調査エリア:東京都、埼玉県、神奈川県、千葉県、岐阜県、愛知県、三重県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県(尚、上記エリアに対しては人口動態に応じた配信)
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