スタートアップ、ベンチャー企業でこれからサービスの価格設定に取り組む方、または「価格設定をどうするか意見がまとまらない」「自社の戦略にあった価格を考えたい」という方へ、基本的な知識や考え方を紹介します。
スタートアップの価格設定は2つ
新しいサービスを作り、急成長を目指すスタートアップにとって、価格について考えるべきことは以下の2つに集約されます。
- KPIとして、顧客平均価格は高めていく
- 高い価値を感じられるサービス、見せ方、伝え方に変えていく
多くの場合、スタートアップ企業の売上は 平均価格✕顧客数(ユーザー数、購入数、広告主数 etc.) に分解できます。もし、イノベーションによって低コスト化を実現したサービスでも、無料でユーザー数を重視する戦略で始めたサービスでも、そこから段々と平均価格を高めていく方向に経営の目標があることは変わりません。
そのためには、サービスの改善を繰り返し、より高い価値を感じてもらうことが基本になります。また、伝え方・ブランディング等の工夫も重要です。
平均価格の向上とは、必ずしもサービスの値上げを意味するわけではありません。ロイヤルカスタマーに注力することや、BtoBサービスであればより大きな企業への導入を進めることでも、平均価格は高まります。
割安さや、キャンペーンによるグロースが注目されてきたスタートアップですが、なぜ価格の向上を考えてみる必要があるのでしょうか。
最適な価格は、目的によって異なる
そもそも、最適な価格というものは、ひとつに定まるものではありません。
・販売数(ユーザー数 etc)の最大化を目指した価格
・売上の最大化を目指した価格
・利益の最大化を目指した価格
これらはすべて違った数字になるでしょう。まずは目的や戦略を明確にした上で、価格設定を考える必要があります。
このときに知っておきたいのが「売上を最大化する価格よりも、利益を最大化する価格は一般的に高い位置にある」という法則です。価格と利益の関係で、それを説明します。
価格と利益の基本的な関係
まず、価格が高いほど、サービスや商品の販売数は減少します。いわゆる需要曲線のような関係です。
コストはどうでしょうか。販売数が減少すると、そのために必要な変動費も減少します。例えば原材料、原価や販促のコスト。リアルな商品を扱っているビジネスであれば在庫や店舗、スタッフ数などが、販売数に応じて変動していきます。
このとき、売上と利益はどうなるでしょうか。
売上=販売数✕価格です。価格がゼロのときは売上もゼロ。そこから価格を高めていくと売上も高くなり、ある点でピークを迎えて、下がっていく山型のグラフになります。
利益=売上ー(変動費+固定費)です。売上とコストの差を取ると、こちらも山型のグラフになります。
2つのグラフを見てみましょう。
売上がピークを迎えたあとも、変動費の減少によって、利益のグラフはまだ上がっています。利益を最大化する価格は、このように、売上を最大化する価格よりも高い位置になるのです。
この少しの差が、利益や利益率を大きく左右することになります。スタートアップにおいては、売上や販売数に注目が集まることは多く、それも間違いではありません。しかし、このような価格と利益の関係を知っておくと、判断も少し変わってくるのではないでしょうか。
まとめ
企業や営業部門にとって、サービスを安くするのは簡単です。顧客も反対しませんし、気持ちが楽です。一方で、サービスを高くするのは心苦しいものです。
だからこそ、今よりも高いところに適した価格帯がある可能性を見落としているかもしれません。利益を意識した価格設定を、もう一度考えてみるのはどうでしょうか。もちろん、その価格に見合うよう、サービスの改善も同時に考えていきましょう。
この記事は、以前に開催したセミナー「プライシング勉強会 スタートアップ・IT編」を基にしています。
Comments are closed.