2月 17

食品ロス対策で注目の世界のサービス、テック企業5選

食品ロスの削減は、SDGsの具体的な目標のひとつとしても掲げられている、世界的に重要な取り組みです。

2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食品廃棄物を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品の損失を減少させる。

食品ロスを減らすため、様々な国で、様々なアプローチのサービスが登場、普及しはじめています。ここでは、私たちが注目している5つのサービスを紹介します。

Shelf Engine 需要予測とロス保証を兼ね備えた自動発注サービス

https://www.shelfengine.com/solutions/

概要

Shelf Engineはシアトルに拠点を置く、スーパーマーケット向けの自動発注サービスを提供する企業です。
メーカーや卸と連携した商品発注の自動化と、成果の週次レポートを提供しています。

機能

生鮮食料品のひとつひとつのSKUについて販売確率を予測。在庫切れや廃棄を抑え、利益を最大化するためのモデルによって、商品の自動発注を行います。販売確率の予測には、店舗の売上データ、地域のイベント、ニューストレンド、天気、休日等のデータを用いた多変量解析と機械学習モデルが構築されています。

もうひとつの特徴が、販売保証です。発注したものの売れ残ってしまった商品はShelf Engineが買い戻しを行っています。これにより食料品店は在庫リスクがほぼゼロとなり、安心して自動発注サービスを利用できます。

導入事例

2018年にホールフーズが導入
以降、クローガー、ターゲットなど大手小売企業での導入が進んでいます。

効果

導入企業において、売上が平均7%向上
対象商品の利益が50%増加
食品の廃棄ロスが32%減少

Shelf Engine
https://www.shelfengine.com/

 

Afresh 需要予測と商品発注の効率化

https://www.afresh.com/solutions

概要

Afreshはサンフランシスコに本社を置き、食料品店での需要を予測し、生鮮食品の在庫を管理するオペレーティングシステムを提供する企業です。

機能

機械学習によって商品の需要を予測し、店舗スタッフ用のiPadアプリを通じて「発注の提案」を表示します。店舗スタッフが売り場を確認しながら、各商品の発注数を検討、そのままiPadアプリを通じて発注を行うまでのオペレーションをなめらかにしています。

学習アルゴリズムを活かして、時間の経過と在庫データを照らし合わせ、全体的なロスを防ぎつつ、予測される需要を満たすように食品の発注量や時期を案内することで、業務効率を高めます。

導入事例

Fresh Thyme Farmers Market
Heinen’s Grocery Store,
Winco Foodsなどの大手食料品ストア

効果

食品廃棄物を4分の1削減。
農産物の利益率が40%向上
トップライン売上が2%から4%増加

Afresh
https://www.afresh.com/

 

Flashfood 見切り商品のマーケットプレイス

https://www.flashfood.com/

概要

Flashfoodはカナダ発の食料品店のフードロスを減らすために開発されたシステムです。食料品店が期限の近い商品情報をアップロードすると、買い手側のユーザーはスマートフォンアプリを介してその商品を購入できます。

機能

まずは店舗スタッフが、賞味期限の近い商品を平均50%割引でFlashfood Marketplaceに出品します。ユーザーはアプリを通して自宅や現在地周辺のお店の割引情報を確認でき、気になる商品をアプリ内で購入することができます。購入後に店舗へ向かい、店内の「Flashfood zone」から商品を受け取る仕組みとなっています。

店舗もユーザーも手軽に始められることが魅力です。店舗側にとっては、食品ロス削減だけではなく、新たな来店を促せることもメリットです。

導入事例

meijer、GIANT、TOPSなど
アメリカとカナダの1000店舗以上で導入。

効果

3~5%のEBIT(利払前・税引前利益)の改善
店舗あたり毎年$100,000を回収
Flashfoodの買い物客の4人に1人は、サービスをきっかけに新しい食料品店を試す
Flashfoodアイテムに10ドルを支払うごとに、15ドルが店内の買い物で使われる

Flashfood
https://www.flashfood.com/

 

Too Good To Go 見切り商品のマーケットプレイス

https://toogoodtogo.org/en/

概要

2016年にデンマークで誕生したのがToo Good To Go。食品ロスの解消を目指し、スーパーマーケットや飲食店で売れ残った商品が半額程度で購入できるサービスを提供。2019年には、公益性の高い企業を認証するB-Corpも取得しています。

機能

ユーザーがアプリを開くと現在地近くの登録店舗が表示され、そこから商品を選び、オンライン決済で購入できます。その後、ユーザーは商品を店舗まで取りに行きます。店舗によっては「マジックボックス」と呼ばれる形で出品されていて、何が入っているか受け取るまでわからないという仕組みもあります。

導入事例

欧州14カ国で展開、3万9000軒以上のレストランやホテル、スーパーなどが登録
Albert Heijn や Jumbo、Ekoplaza、SPARなど、オランダのスーパー全体の50%以上で導入
ユーザー数は2000万人超

効果

年間2800万食のロスを防止
1つのバッグが購入されるごとに2.5kgのCO2eが削減

Too Good To Go
https://toogoodtogo.org/en

 

Wasteless 電子値札を用いた期限連動プライシング

https://www.wasteless.com/

概要

2017年に設立されたのがWasteless。賞味期限が近い食品のダイナミックプライシングを実現することで、食品ロスを減らし、利益率をあげるサービスをスーパーマーケットに提供をしています。

機能

売上・賞味期限・現在の日時・コスト・在庫・プロモーション・イベント・競合他社などの42のデータを解析するAIにより、1日中価格調整を行うシステムを提供しています。従来のような賞味期限の直前となってから大幅な割引を行う形ではなく、Wastelessは2%引きなど小さな単位でゆっくりと値下げをしていくアプローチを可能にします。これにより、利幅を保ちながら食品ロスを減らすことに貢献します。

電子棚札とよばれる、電子ペーパーを用いた値札や、POSシステムと連動し、データから導き出される価格をタイムリーに売り場へと反映します。

導入事例

スペイン・マドリードにある食料品店DIA。
イタリアのIper社などの3つの食料品チェーンの数十店舗で導入

効果

食品ロス 32.8%の削減
収益 6.3%の増加
商品一つあたりの利益率が3%向上

店舗の環境に優しいイメージ 72%の向上
割引制度理解度 94%の向上
1900トンの二酸化炭素の排出削減

Wasteless
https://www.wasteless.com/

おわりに

食品ロスを少しでも減らすためのアプローチはここで紹介した様に多岐にわたります。

欠品ロスも廃棄ロスも抑えるために適量を発注する、という業務にフォーカスを当てたのがShelf EngineとAfresh。廃棄が近くなってしまった商品を、メルカリのようなスマートフォン上のマーケットプレイスで流通促進させるのがFlashfoodとToo Good To Goです。そして、見切りと呼ばれる期限連動の値下げを自動化・高度化するのがWastelessでした。

商品部門や、流通のフェーズごとに設計されたこれらのサービス事例から学び、取り入れるチャンスは日本のスーパーマーケット・小売企業においても十分あるはずです。

 


ハルモニアでは、企業のプライシング変革支援として、価格戦略やプライシングに関する技術導入相談を承っています。

お問い合わせはこちら

ハルモニアも小売業界の企業と連携し、プライシングをフックにした食品ロス削減サービスの提供に取り組んでいます。
東芝テック平等氏との対談イベントレポートはこちら。