4月 13

サービス向上と利益成長の両立をめざして美々津CCが挑む「顧客視点」のプライシング変革

■プロジェクト概要

  • 業種       :ゴルフ場
  • クライアント企業名:美々津観光開発株式会社
  • 対象施設     :美々津カントリークラブ
  • 内容       :価格戦略立案・実行支援

■背景

  • 美々津CCにおけるプレイヤーの体験価値向上を図るため
  • ゴルフ業界全体でプレイヤーが高齢化するなかで、若年層のプレイヤーを新規獲得するため
  • 固定的な料金体系により発生していた機会損失を減らし、増収を目指すため

 


 

ゴルフ業界が抱える、プレイヤー高齢化の課題

コロナ禍でも密にならず、屋外で楽しめるレジャーということで近年人気の高まるゴルフ。しかし、そのブームだけではカバーし切れないほど大きな課題が、ゴルフ場業界に横たわっています。

その一つがゴルフ場における「2025年問題」。

ゴルフ場の多くは会員権を取得するために預託金を預ける必要があり、それを元手に施設運営されていますが、退会時にはゴルフ場から会員へその預託金を返還する義務があります。日本社会の高齢化に伴い、2025年には75歳以上の後期高齢者人口が2,180万人になる(※)と予測されるており、ゴルフ場経営に大きなインパクトをあたえる預託金返還のピークがもうすぐそこに迫ってきているのです。

またゴルフ人口の高齢化はプレイヤー数の減少による市場の競争激化にも影響を与えています。これからのゴルフ場経営では、プレイヤーの若返りと、会員以外のビジタープレイヤーなどもうまく呼び込みながら、新たな層のプレイヤー獲得と高騰するコストの価格への転嫁、そしてプレイヤーが感じる価値の向上がゴルフ業界の抱える構造的な問題を解決し、継続可能な事業を行うために必要な変化です。

出典:内閣府「令和元年版高齢社会白書」概要版 第1章 高齢化の状況

 

市場縮小の影響は地方のゴルフ場にも

今回、ハルモニアが価格戦略の見直しを支援したのは宮崎県日向市にある美々津カントリークラブ(以下、美々津CC)。宮崎県内で2番目に長い、50年以上の歴史あるゴルフコースは太平洋を眺めながらプレーができ、県内・県外問わず「いつかは美々津でプレーしてみたい」と言うゴルファーは少なくありません。また、ジュニア向け競技会の会場にもなっており、未来のゴルファー育成にも力を入れています。

今回のプロジェクトがスタートしたのは、2021年10月でした。美々津CCでも、プレイヤーの高齢化・各種コストの高騰・人手不足など、業界課題に直面していました。そのような状況に危機感を持っていた美々津CCの運営会社、美々津観光株式会社の清本社長が、自らハルモニアへお声かけくださったことがきっかけでした。

今回の支援内容は、大きく分けて①売上データ等の分析や近隣の市場調査②課題特定と増収目標の設定③増収施策の実行支援の3つ。

まず、売上データの分析や課題ヒアリングから見えてきたのは、料金設定が固定的なことによる機会損失でした。天候やシーズンによって需要が左右されやすいゴルフ場ですが、美々津CCのビジター利用料金は繁忙期や閑散期でもほぼ変動がなく、ゴルフコースの稼働率にも影響が見られました。また、レストランメニュー価格・施設利用に際してのさまざまな料金を一つずつ見ていくことで、ビジター料金以外にもいくつかの課題が浮き彫りになってきました。美々津CCでは、この分析結果受け、長期的な目標としての若年層顧客の獲得と、機会損失の削減による増収が目標として設定され、取り組みを開始しました。

 

増収を目指すうえで重要視した「顧客視点」

美々津CCは、一過性の増収を目標にしているわけではありません。あくまで顧客の感じる価値と価格を一致させること、価値と収益を継続的に向上させることが重要であり、そのためには「顧客視点」を今一度見直す必要がありました。

既存顧客や新規で呼び込みたい顧客のペルソナがどんなものか、またその購買行動・心理がどのようなものかというのは重要な要素となり、顧客を常に中心において施策選定・実行する必要があります。企業視点でコストに利益を上乗せするコストベース・プライシングから、顧客が感じる価値に応じて価格を設定するバリューベース・プライシングへと考え方を変えることが、1つの大きなチェンジでした。

例えば、休日と平日でも需要には差があり、また、天気が読めない先の日程での予約するのと、天気予報がわかっている直前の日程を予約をするのでは、顧客にとってのリスクの大きさが変わります。そういった顧客が行動を決める要素を加味して、顧客にとっても受容しやすい価格設定をするのがバリューベース・プライシングです。

こうした価格戦略のベースとなる考え方のレクチャーに始まり、目標設定・施策の実行優先順位、スケジュール設定、さらに美々津CC内でのプロジェクトオーナーの選任にいたるまで。短い期間で議論はスムーズに進行し、レストラン部門や季節性まで踏み込んだ価格戦略を見出すことができました。

 

ー清本社長にお伺いします。今回のプロジェクトを経て、美々津CCの今後どのように変わっていきそうでしょうか?

清本様:

ハルモニアとプロジェクトを進める上で面白かったのは、押し付けがましくなく、「何をやりたいか」や「何が実行できそうか」を礎とした議論ができたこと。

本プロジェクトで実施したワークショップでは、データから得られる示唆をもとに、各スタッフの意見も反映しながら当事者意識を持って今後の打ち手を議論できました。これから打ち手を実行するフェーズになりますが、社内メンバーを主体として推進できるロードマップも見えてきています。ハルモニア社に引き続き伴走してもらいながら、単なる値上げにとどまらず、顧客の感じる価値に見合ったサービスの提供やコースの品質保持・向上の機会を追求していくことが必要だと考えています。

また、実行やお客様へのケアをないがしろにした打ち手では、実行フェーズまでいたらなかったでしょう。価格は非常にセンシティブな問題です。想定外の事象にも柔軟に対応すること、実行の結果にもとづき改善点を見出すこと、そしてわれわれの提供できている価値を再確認すること、そういった一連のサイクルが見えていなければなりません。

 

ハルモニアは引き続き、美々津CCの変革実行フェーズを伴走しながら、ゴルフ業界・レジャー業界のプライシングを積極的に支援してまいります。

 


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