5月 17

プライシングで持続可能な世界を目指すハルモニアが、全社目標(OKR)を公表する理由

価格戦略をテーマに事業を広げてきたハルモニア株式会社(以下、ハルモニア)は、2023年5月に気候変動・地球温暖化の緩和を目的とする全社目標(OKR、Objectives and Key Results)を公表しました。

創業期はダイナミックプライシングサービスをホテル業界に向けて提供してきたハルモニアですが、2020年〜2022年にかけてその対象市場を拡大。現在は小売業界や高速バス業界にプライシングシステムとコンサルティングサービスを提供しています。

一時は企業の存続が危ぶまれたコロナ禍を機に、CEOの松村さんは自社の存在意義を深く考え直すようになったといいます。その過程で「ビジネスのすべてをダイナミックにし、地球のサステナビリティを高める」というミッションに結びつく目標が具体化され、今回の全社目標の策定に繋がりました。

ハルモニアがこのタイミングで全社目標を公表するのはなぜでしょうか。はたしてどのように地球規模の課題に挑もうとしているのでしょうか。

CEOの松村大貴さんと、同社でUI/UXデザイナーとして活躍する武田奈々さんに話を聞きました。

「危機感と好奇心を覚えた」ーー世界と日本の大きなギャップ

コロナ禍でハルモニアの存在意義を考え続けてきた松村さんは、海外のビジネスカンファレンスへの参加で大きなヒントを得ることになります。

松村「日本ではなかなか話題に挙がらないサステナビリティの問題が、僕が訪れた国ではすでに最注目のイシューとして扱われています。さらに、同世代の個人や超大手企業が強い問題意識を持って行動を始めていたんです。この世界と日本の大きなギャップに、危機感と好奇心を同時に覚えました」

海外で得たきっかけから、文献や国際機関のデータを読み漁り、ハルモニアのメンバーとディスカッションを繰り返した末、松村さんの中でひとつの確信が生まれます。

松村「『私たちは気候変動の影響を感じる最初の世代であり、それに対処できる最後の世代です』というバラク・オバマの言葉に、大きく影響を受けました。たとえ資本主義的な成功が得られても、地球のサステナビリティが失われてしまったらそこには何の価値もありません。
サステナビリティのリスクは多岐にわたっていますが、まずは気候変動が最も差し迫った危機のひとつであり、ハルモニアが培ってきた技術とのリンクもはっきりと見えたので、ここに全てをフォーカスすることを決めました」

こうした背景をもとに、ハルモニアは気候変動の緩和を目的とする全社目標を策定しました。

株式会社空からハルモニアへのリブランディングでも中心となった武田さんは、自社の変化をどのように感じているのでしょうか。

武田「ハルモニアにリブランディングする前は、“経済活動と個人の幸せがどのように結びつくか”という点が、会社の大きなバリューのひとつでした。ハルモニアへ転換したタイミングからは、個人の幸せという枠を超えて社会的意義を求めるようになりました。それが最も大きな変化だと感じています」

今回の全社目標の明文化は、ハルモニアで働くメンバーの動機付けにも影響があったそうです。

武田「ミッションが具体的な目標になったことで、普段取り組んでいる業務がどのような社会的意義を持つのかが明確になり、各自の仕事への動機に転換されていると思います。

これまで私生活の中で環境への配慮を考えることはありましたが、今は企業として発信することができています。今回の取り組みで、私自身も仕事に対する動機付けの深いところと繋がったという実感があるんです」

“食品ロスの削減”と“ビジネス変革”でネットゼロにコミット

気候変動の課題に対して取り組まなければいけないことは様々です。ハルモニアは企業や家庭から排出される温室効果ガスを減らし、実質的な温室効果ガスの排出量を2050年までにゼロにするという「ネットゼロ」に取り組むことを決めました。

そのためにハルモニアが掲げている事業目標の1つが、食品ロスの削減です。

松村「食品ロスはもったいないだけでなく、食料生産や廃棄の過程でたくさんの温室効果ガスが排出されます。私たちは小売業界のパートナー企業と協業しながら、まずは惣菜販売におけるロスを2026年末までに半減させようと試みています」

2つ目の事業目標として掲げているのは、企業の省資源・高収益化です。企業の収益性が低いことこそが変革のボトルネックに繋がっていると、松村さんは分析します。

松村「企業の収益性が低いということは、利益を出すためにたくさんの商品を売る必要があるということです。商品の生産、販売、輸送、在庫管理などあらゆるコストがかかり、いずれも温室効果ガスの排出に繋がっています。また、収益性とサステナビリティを両立させづらいことが、持続可能なビジネスモデルへの転換や投資のボトルネックとなっているんです」

武田さんは、こうしたハルモニアの事業目標はこれからの時代にマッチしたものになっていくと考えています。

武田「今、日本はあらゆるモノが溢れている状態です。けれど若い世代の人たちは何でも欲しがるのではなく、手元に置くものを厳選していくような人が多いと感じています。少ない資源で高付加価値のものを販売していく事業モデルは、これからの世代のライフスタイルを考えたときにマッチしていくと思うんです」

イギリスでの生活経験がある武田さんは、欧米と日本には行動原理や考え方の違いがあるとも指摘します。

武田「個人的な印象ですが、欧米の人たちが“正しいことをしよう”という想いを大事にしているのに対し、日本人は“世論や合意形成”に重きを置いている国民性だと思います。日本はそうした国民性もあってサステナビリティに対して積極的な人が少ないのかもしれません。

サステナビリティや気候変動対策の重要性を認識して行動する人は、今はマイノリティだと思います。その母数を少しでも増やすためにも、こうして企業として発信するのは大事なことだと改めて感じています」

進行中の2つの事業:Harmoniaロスフリーと価格戦略伴走プロジェクト

食品ロスの削減、企業の省資源・高収益化という2つの事業目標に向け、ハルモニアでは今まさに具体的なプロジェクトが進行中です。

まず食品ロス対策として取り組んでいるのが「Harmoniaロスフリー」と名付けられたソリューションの開発・提供です。スーパーマーケットなどで、惣菜の製造調整と値引率の最適化によって、経済性を維持したまま食品ロスを減らすことを目的としています。

武田「その日の売り場の状態に合わせた値引き率を算出することで、企業の“売りたい”と消費者の“買いたい”という気持ちがマッチした状態を作ります。現時点で扱っているのはお惣菜の値引きですが、同じソリューションで他の商品部門にも展開していけると考えています」

食品ロスを減らす、Harmoniaロスフリー

企業の省資源・高収益化に関しては、小売業界や高速バス業界のパートナー企業に向けて「価格戦略伴走プロジェクト」を実施しています。

松村「ハルモニアの知見やテクノロジーを使って、パートナー企業の価格戦略の設計と実行をより高度なものに変えていくお手伝いをしています。具体的なところでは、2022年末から株式会社カインズと資本業務提携し、両社の混成チームでプロジェクトに取り組んでいます。
より多くの企業にパートナーになっていただき、私たちの価格戦略に対する知見を活用していただきたいと思っています」

目標達成のために足りないもの

松村さんには、今後に向けたさらに大きな展望があります。それは、持続可能な消費・選択のハードルとなっているグリーンプレミアムの解消に寄与することです。

グリーンプレミアムとは、持続可能な製品やサービスと、環境負荷の大きいものの価格差のことを指します。現状では、環境に配慮して地球に優しい選択肢が、従来の製法のものよりも高価格に設定されていることが少なくありません。そのため、消費者や企業は、グリーンな製品、エネルギー、ライフスタイルを選択しづらい構造にあります。

松村「プライシングの新しい仕組みを作ってグリーンプレミアムを逆転させれば、社会全体が積極的に持続可能な選択をしていく流れに変えていくことができます。
今の事業でも、“廃棄期限が近い食品の方が安い”、“空席の多いバスの方がお得”といった形で、グリーンな選択と価格の訴求を合致させるという仕掛けは活用されています。ゆくゆくは広範な産業でグリーンプレミアムをなくし、社会全体のシフトを促していくことが目標です」

会社としての最上位目標をソーシャルインパクトに置いた瞬間から、ハルモニアはビジネスへの向き合い方も変化させています。

松村「今は“クライアント”や“お客様”という呼び方をやめ、“パートナー企業”と呼ぶようにしています。また、同じ業界で同じ問題を解決しようとしている企業があれば、それは“競合”ではなく“仲間”です。果実を独占するのではなく、学んだことを共有して多くの企業が束になれば、この難しい問題をより速く解決していけると考えています」

ハルモニアが今回策定した全社目標を達成するためには、大きな壁があるといいます。

松村「正直、今のハルモニアのパワーだけで目標を達成することは難しいです。もっともっと多くの個人や企業のみなさんの助けが必要です。社会全体のミッションとして、一緒にムーブメントを起こしてくれる仲間を必要としています。今回の全社目標公表によって、この大きな課題を何とかしようと共感して立ち上がってくれる人が増えたら嬉しいです」

武田「ひとりのメンバーとしても、掲げている目標数値はかなり意欲的なものだと感じています。不可能ではないけれど、並々ならぬ努力と仲間の力がないと達成できない目標です。特にコンサルテーションやカスタマーサクセスのメンバーを増やし、皆で協力していかなければなりません。ハルモニアに興味を持ってくださった方は、ぜひ気軽に話を聞きに来てください」

最後に、松村さんは未来の仲間に向けて熱いメッセージを送ります。

松村「あなたの創造性と情熱をぶつけることができる、現代の最も困難で最もエキサイティングな課題がここにあります。その課題に立ち向かうということは、大きな意義を感じられる、めちゃくちゃに色濃く幸せな人生が約束されているようなものだと僕は思う。ハルモニアは多様な領域からの新しい仲間を募集しています。今、あなたの才能が必要です」

今回公表した企業紹介資料はこちら

採用情報・オープンポジションはこちら

https://www.harmoniainc.jp/corporate/
https://herp.careers/v1/sorainc

Wantedlyをお使いの方はこちら
https://www.wantedly.com/companies/harmonia