4月 23

小売業・飲食店のダイナミックプライシングの形:オフピークプライシング

生活に欠かせないサービスとして営業を続けてくださっているスーパーマーケットやドラッグストア等の小売店舗や飲食店。ピーク時間帯にできてしまうお客様のレジ行列は、密集を避ける観点からも、できる限り防ぐ必要があります。

行列ができる理由は、お客様が来店する時間帯が集中しているから。そうした、来店タイミングを「お得の差」で平たくする仕組みがオフピークプライシングです。

様々に活用されているオフピークプライシング

オフピークプライシングは、日本でも様々な場所で使われています。

東京メトロ
東西線で、通勤ラッシュとなる時間帯を避け、オフピーク時間帯に乗車すると交通系ICカードにチャージできるポイントがもらえます。
東西線オフピークプロジェクト

高速道路
時間帯による集中を抑制する深夜割引、大型車の沿線影響を抑制する環境ロードプライシング割引などが導入されています。
首都高

電力
電力会社によって、夏季の日中などピークタイムを避けることによって電力料金が割安になる、ピークシフトプランが提供されています。
東北電力

このように、実際に料金を上下させるものから、ポイントを活用したものまで、様々な方法でオフピークを目指した取り組みが行われています。

オフピークプライシングは、「北風と太陽」の太陽のよう。上手にお得を設定することで、強制ではなく、自発的にお客様に来店タイミングを変えていただく仕組みです。オフピークすることは、来店されるお客様のリスクを減らすだけでなく、働く従業員の皆さんのシフトやリスクを抑制することにもつながります。

では、どのように活用を考えていけばよいのでしょうか。
まずは、行列のできる仕組みを考えてみましょう。

行列はなぜ起こるのか

お客様の買い物の量によっても変わりますが、時間あたりにレジが対応できる人数のペースは限られています。このレジの対応ペースを、来店される人数が上回ってしまうと行列ができ、伸びてしまいます。

レジの対応ペース(R)と、来店される人数(C)の関係を整理すると、以下のようになります。

  • R > C 行列はできない(行列があれば短くなっていく)
  • R = C 行列はできない(行列があればそのまま、短くも長くもならない)
  • R < C 行列ができる(この状態が続くと行列はさらに長くなっていく)

実際には、ピークの時間帯にはレジを増員し、Rを増やすことで対応されているでしょう。しかし、すべてのレジを稼働させても来店される人数のほうが多い時間帯には、それでも行列ができてしまいます。

オフピークプライシングの3つの方法

オフピークプライシングには3つの方法があります。これらのいずれかを選ぶか、組み合わせて自分の店舗とお客様に合った仕組みを作ります。

①ピーク時間帯の何らかの値上げ

特に混雑する時間帯のご来店に応じるため、何らかの商品の値上げ、または追加料金の設定を行うものです。レストラン、タクシー等で深夜割増が設定されているのと近いかもしれません。
商品すべての値札を変更するのは難しいでしょうから、一部人気商品の値段変更や、ピーク時サービス料の設定、付帯サービス(自宅への配送等)の値段変更等が考えられます。

注意点:混雑やリスクを下げ、お客様の利便性を向上させるためとはいえ、値上げの取り組みにはお客様に抵抗感を持たれてしまう可能性もあります。ピーク時の値上げで得られる収益分を、何らかのお客様メリットへと還元する施策とセットで考えることが必要です。

②すいている時間帯の何らかの値下げ

反対に、余裕のある時間帯に、何らかの商品の値下げや、割引を行うものです。
タイムセール、朝市や、特定の時間帯だけ使えるクーポンといった形で、定番商品を時間帯によってお得な値段に設定することが考えられます。

③ポイントバック、その他のメリット設定

値段そのものではなく、ポイントや、何らかのメリットを時間帯によって設定するものです。
会員カードやクレジットカードがあればそのポイント付与率を変える、すいている時間帯に来店されたお客様には粗品をプレゼントするなどが考えられます。

②③の共通の注意点:持続的な取り組みにするためには、値下げやポイント付与の原資を確保する必要があります。オフピークによって実現する効率化やシフト調整でのコスト削減。取り組みに共感されるお客様が増えることによるリピート率の向上など、ビジネスへのプラスの影響とセットで施策を考えます。

オフピークプライシング導入のステップ、考え方

1 現状の把握と目標の設定

はじめに、現在の混雑発生状況を確認します。
POSレジのデータで時間帯ごとの来店人数(正確にはレジ通過人数)を調べる。実際に店内を見て、行列のできる時間帯とその長さを確認する等の方法が考えられます。可能であれば時間帯ごとの来店人数とレジ対応ペースをグラフで比較できるようにしましょう。これで、どの時間帯に余裕があり、どの時間帯にレジ対応ペースを越えた混雑のピークがあるのかを把握します。
そして、ピーク時間帯に来店されるお客様を何名くらい(または何%くらい)、どの時間帯にシフトしていただくことを目指すのか、目標を設定します。

2 お得の仕組み設計

オフピークプライシング3つの方法を参考に、目標のピークシフトを促せそうな仕組みを設計します。
来店されるお客様に納得感を持ってもらうために、どの方法で、何の料金やメリットの差を設定すべきかを慎重に考える必要があります。

3 お客様への周知、理解促進

オフピークプライシングの導入について、お客様へ丁寧に周知します。
どの時間帯に何が変わるのかをわかりやすく伝えるだけでなく、取り組みのねらいや、お客様の安全性・利便性へのメリットも含めて繰り返しご案内。ご理解いただき、積極的に活用いただくことを促します。

4 効果の確認と改善

導入後、お客様に浸透するまでの一定期間を待って、どの程度オフピークが実現できているかを確認します。
来店タイミングのシフトが十分でなければ追加の施策や、値上げ/値下げ率の変更。反対に、タイムセール時間帯にシフトしすぎてしまっていたら施策の緩和など、改善を繰り返すことで、ちょうど良いオフピークを目指していきます。

・・・

今回はオフピークプライシングの基本的な考え方を紹介しました。実際に導入される際には、上述したような注意点に気を配り、慎重に検討することをお勧めします。

※密集を避けるための施策について、各自治体や経産省でも指針が検討されているとの発表や、各社の取組事例の情報が公開されています。必ず、こうした公的機関の情報もご確認ください。

スーパーなど小売店舗における感染拡大防止のための取組事例紹介サイト(経済産業省、農林水産省、消費者庁、流通経済研究所)
https://distribute-dei-taisaku.jp/

新型コロナウイルス感染症対策サイト(東京都)
https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/

 

 

 

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