9月 10

飲食店におけるダイナミックプライシングの可能性

Go To Eatキャンペーン事業」が早ければ9月にも開始されます。食事券の購入補助や予約サイトのポイント付与等によって飲食店の利用を促す、農林水産省による施策です。

本事業によって飲食店への来店客増は確実で、これまで以上に感染症対策が着実に実行される必要があります。店内面積には限りがあるため、多くの飲食店にとっては、ソーシャルディスタンスを保つために座席を間引く等の形で時間あたりの来客人数を抑制するような対策を行わざるを得ません。

画像:「Go To Eatキャンペーン事業」公式ページ

「Go To Eatキャンペーン事業」公式ページでは、消費者に向けたいくつかの注意喚起の中で「混雑時間を避ける」ことが推奨されてはいますが、具体的な方策が示されているわけではありません。どれだけ混雑することが分かっていても特定の時間帯に来店客が集中して行列ができてしまっていたこれまでの事象を鑑みると、来店客の混雑回避を促す何らかの仕組みが必要になりそうです。

ダイナミックプライシングを応用して飲食店の三密を回避できるか

対策の一つとして、ダイナミックプライシングを応用した「オフピークプライシング」の考え方が有効かもしれません。オフピークプライシングは以前こちらの記事でご紹介した三密回避のためのプライシング手法のことで、「お得の差」によって来店タイミングを平たくすることを目指します。

記事内でご説明している通り、実践パターンは3つに分けられます。

①ピーク時間帯の何らかの値上げ
混雑する時間帯に商品を値上げしたり、深夜料金などのサービス料を設定する。

②すいている時間帯の何らかの値下げ
空いている時間帯に値下げしたり、割引する。

③ポイントバック、その他のメリット設定
ポイント付与率の変動やプレゼントによって来店時間を分散させる。すでにポイントシステムを運用しているようなチェーン店舗において特に有用な施策。

ダイナミックプライシングというと、アルゴリズムが組み込まれたシステムを実装するような複雑な対策が求められるように感じますが、

  • 三密を抑制して感染症対策をする
  • 当面の期間、来店時間を分散させる

ことを目的とすれば、単純な施策であっても十分に実施する意義がある。「オフピークプライシング」はそういった考え方に基づいています。

飲食店のオフピークプライシング事例

時間帯によって価格が変わる定食

定食屋「お食事処asatte」では、定食の価格を「1,000円前後」に設定し、時間帯によって変動させることによって来店時間の分散を図っています。インスタグラムのアカウントで価格予測を公開することで、常連客への周知も行っているようです。

画像:同じランチなのに時間で価格が違う!? “密”を避ける定食屋さんの対策が話題呼ぶ

”遅得”御膳

「肉寿司 肉和食 KINTAN」では、「遅得御膳」という平日13時以降限定のお得なランチを提供しています。メニュー内容を工夫し、通常よりもお得な料金で提供することで、遅い時間帯への来店を促す仕組みです。この仕組みであれば、通常メニューの料金を変動させることなく来店客数を分散できる可能性があります。

画像:肉寿司 肉和食 KINTAN

飲食店のダイナミックプライシング、今後の展開

オフピークプライシングの事例をご紹介しましたが、共通しているのは「顧客ニーズに応えていること」です。来店客によって、料理の内容、金額、雰囲気、時間の過ごし方等、飲食店に求めることは異なります。価格を価値のバロメーターと捉えるならば、多様な顧客ニーズに応えることで、新たな顧客層を獲得することも可能です。

他の業態におけるオフピークプライシングの普及や柔軟に働ける(=時間の融通が効きやすい)社会が到来しつつある今、飲食店の料金が少しずつ変動する世界が来るかもしれません。

 

 

 

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