9月 15

【プライスレポート】ウィズコロナで考えるバスツアー新時代の価格戦略

ハルモニア株式会社(旧社名:株式会社空)は、旅行代理店業界におけるプライシング変革支援の一環として「ウィズコロナ時代におけるバスツアーの価格に対する意識調査」を実施しました。

新型コロナウイルスの流行により、外出制限に加え密閉空間を避けるため利用が減少しているバスツアーにおいて、今後再考すべきプランや価格戦略への示唆となる消費者の意識・行動の変容が見えてきました。

 

■調査結果サマリ

  • バスツアーのプランごとにおける消費者が受容できる価格帯分析
    • オプションの有無にかかわらず特定の価格で相場観が形成されている
    • 消費者が支払える上限額は、食事のアップグレードより席の広さのアップグレードが高い
  • バスツアー利用頻度
    • 直近3年間で1〜2回の利用が7割
    • 3年間で3回以上参加した人は女性が男性の1.5倍
    • 35〜49歳の利用頻度が高い
  • 年間支出金額(2019年度以前)
    • 年間3万円以下が約6割
  • 値下げが歓迎されるシチュエーション
    • 早期予約、天候不順時の割引が最も嬉しいとの回答
  • 値上げが許容されるシチュエーション
    • 値上げに対してはシビアだが、新型コロナ対策や特別な体験への割増は許容
  • 旅行代理店ごとのパーチェスファネルの傾向
    • 大手や独立系代理店の中には本格検討した人の半数以上が購入
    • 一方電鉄系の多くは本格検討から購入への推移が3分の1以下

 

■調査対象 
 回答者  :主体的に旅行会社を利用し、かつ直近3年間で1回以上参加した人
 旅行代理店:大手A〜E、電鉄系F〜J、中堅独立系K〜M

 


ポイント1 バスツアーの相場観は強い。ただし、座席が広いプランは通常プランよりも価格受容帯の上限額に1.4倍の差があり、値上げの可能性あり

<仮設定バスツアープラン概要>
 プラン1:果物狩り+レストランでの昼食+お土産をセットにした日帰りスタンダードプラン
 プラン2:プラン1の昼食をフレンチレストラン(ワイン付き)にアップグレード
 プラン3:プラン1の座席を1名で2席利用にアップグレード

<調査結果>

  • 特定のプランを食事・席の広さのアップグレードをしても、理想価格はスタンダードプランとほぼ変わらず。バスツアーに対する相場観は強い
  • 2席利用するアップグレード(プラン3)と基本内容(プラン1)を比較すると価格受容帯の上限額に1.4倍の差があった

PSM分析によるとプラン1〜3ともに異なる特性のオプションが付帯されていたとしても理想価格に大きな変動はなかった。しかし、食事よりもバス車内での快適性や公衆衛生への配慮の方が価値を感じるという結果が得られたのは、新型コロナの影響の可能性もあるであろう。

 

 

ポイント2 全体の7割が直近3年間で1〜2回の利用頻度に止まるが、女性の方が男性より利用頻度が高い傾向

<調査結果>

  • 全体の7割の人が年間1〜2回程度利用
  • 年間3回以上バスツアーを利用する人の割合:女性は平均37%、男性では平均25%

3回以上リピートするのは回答者全体の3割程度であるものの、性別ごとの平均では約1.5倍の開きがある。男女で異なる購買行動にも合わせて戦略を練った方が良いと考えられる。

 

 

ポイント3 新型コロナ流行以前、バスツアー1人あたりの年間支出金額は3万以内が約6割

<調査結果>

  • 新型コロナ流行以前(〜2019)、年間の1人当たりの支出金額は3万円以内が約6割
  • 35〜49歳の女性のセグメントは、年間4〜20万円支出する人が40%で最も多いが、その年齢層を超えると3万円以内のボリュームが伸びる

1人あたりの年間支出金額が最も多いセグメントは、35〜49歳の女性であった。また、ポイント2の結果からも、同セグメントの女性の利用頻度が相対的に高いことがわかる。高齢者をターゲットにしている企業については、当該セグメントの取り込みも新たな事業機会があるといえよう。

 

 

ポイント4 値下理由として嬉しいのは、早期割・天候不順の場合

<調査結果>

  • 全セグメントで早期割・天候が悪い場合の値下げが上位

お客様ランクなどの顧客ロイヤリティに対する値引きは35〜49歳男性以外では下位となり、早期割や天候が悪い場合などの値下げ理由が上位を占めた。早期割は集客施策にもなり得るため、販売者側にもメリットがあると言える。

 

 

ポイント5 値上げに対してはシビアだが、新型コロナ対策や特別な体験に対しての割増は許容

<調査結果>

  • 「少しでも割増するなら申し込みをやめる」という回答は全シーンにおいて30%以上
  • 新型コロナ対策がしっかりしている/広い座席へのアップグレード/特別な体験ができる場合、約4割が〜1,000円の値上げまでなら許容

値上げ受容性は全体的にシビアな状況。しかし、車内での快適性や感染症対策への配慮、普段できない特別な体験については、オプションとして単価を高める施策とできる示唆が得られた。

 

 

ポイント6 バスツアーの申込率について、大手代理店と電鉄系代理店では明確な差があり

<調査結果>

  • 「本格検討したが、申し込みに至らなかった」と「申込・参加した」層の合計のうち、実際  に申込した数において、大手A・B・Cは当該代理店のバスツアーを本格検討した人のうち半数以上が参加。一方で、G以外の電鉄系代理店は、本格検討から参加となった割合が3分の1以下

大手は本格検討されれば申し込みまで繋がるケースが多いが、電鉄系旅行代理店のツアーは本格検討された後、もう一押しの申込に誘導する打ち手が必要。

 

 

■まとめ

バスツアー全体で、強い相場感が醸成されているものの、ポイント1で述べたとおりオプション等の工夫で最大1.4倍程度の値上げも許容される可能性が示された。

こうしたオプションプラン策定時に特に考慮すべきは、昨今の市況を反映した感染症対策であり、今回の結果に消費者のその意図を垣間見ることができた。また、早期予約割引などを活用すれば集客数を伸ばすこと効果も期待でき、時期による価格変動や特別な体験などを提供するオプションプランにより、収益向上も実現可能と見られる。

女性については、35〜49歳の女性の利用頻度が高意など、性別・年代によりバスツアーの購買行動に違いがあることも示された。それぞれの性別・年代にあった戦略を考えることも売り上げ向上への方策のひとつである。

加えて、ポイント6で言及したとおり、大手旅行代理店と電鉄系代理店とでは検討から購入に至る割合に差があるという事実も得られた。

旅行代理店・ツアーサービスにおいても、航空券・ホテル・高速バスと同様に柔軟な価格設計を検討するタイミングが今まさに来ているといえよう。

 

 

■本調査に関するお問い合わせ

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また、ハルモニア株式会社では、プライシング変革支援として旅行業界におけるダイナミックプライシング導入相談も承っております。

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■調査概要

・調査目的
 バスツアーに対する許容可能な支出額を顧客セグメントごとに把握する(例:年代別、性別)
・調査手法:インターネット定量調査
・実査体制
  設計:ハルモニア株式会社
  実査:株式会社ディーアンドエム
・調査対象
  国:国内
  性別:男性、女性
  年齢:35歳以上85歳以下
  セグメント:直近3年間で主体的に旅行会社を利用し、かつバス旅に参加したことがある人
  対象エリア:一都三県(東京・神奈川・千葉・埼玉)
  排除条件:広告代理店、調査会社等の同業者
・調査サンプル数
  スクリーニング調査:43,580ss
  本調査:798ss
・実査時期:2021年7月20日~27日